第二種金融商品取引業者の行為規制

第二種金融商品取引業として業務を行うときに、法令により守るべきとされていることや禁止されていることがあります。これを金融商品取引業者の「行為規制」とよび、これに違反すると法令違反としてペナルティが課せられます。主なものは次のとおりです。

1.顧客に対する誠実義務

金融商品取引業者は「顧客の知識・経験・財産の状況および契約締結の目的に照らして不適当な勧誘を行い、投資者保護に欠けることのないようにしなければならない。」とされています。

2.標識の掲示義務

金融商品取引業者等は、営業所又は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、内閣府令で定める様式の標識を掲示しなければなりません。また、金融商品取引業者等以外の者がこれに類似する標識を掲示することはできません。

標識の掲示義務

3.名義貸しの禁止

金融商品取引業者等は、自己の名義をもって、他人に金融商品取引業を行わせてはなりません。これが行われると登録制度の意味がなくなってしまうからです。

4.社債の管理の禁止等

金融商品取引業者等は、社債管理者又は信託契約の受託会社になることはできません。その理由は、それらの行為が社債権者の利益の保護をするためのものであるから、金融商品取引業者の中立的立場とは相容れない行為であるからです。しかし、引受人となることはできます。

5.広告等の規制

利用者保護の徹底を図る観点から、金融商品取引業者等が、その金融商品取引業の内容について広告等をする場合に、一定の事項の表示を義務づけるとともに、利益の見込み等について著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させる表示をすることは禁止されています。

表示しなければならない事項

  1. 金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名
  2. 金融商品取引業者である旨及び金融商品取引業者等の登録番号
  3. 金融商品取引業の内容に関する事項であって、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要事項

6.取引態様の事前明示義務

金融商品取引業者等は、顧客から有価証券の売買又は取引に関する注文を受けたときは、取引の態様を事前に明らかにしなければなりません。
これは、ディーラーとブローカーの両者を兼ねる金融商品取引業者が顧客から注文を受けたときに、自己がその相手方となって売買を成立させる注文なのか、それとも委託注文なのかの区別をはっきりさせておかないと金融商品取引業者は他に売り手を探さずに自分が手持ちしている金融商品を顧客に売りつけるなど、顧客の利益を害する恐れがあるからです。

取引態様

取引が次のうちどの態様にあたるのかを事前に明示しなければなりません。

  1. 自己がその相手方となって売買、取引を成立させる
  2. 媒介し、取次ぎによって売買、取引を成立させる
  3. 代理して売買、取引を成立させる

7.契約締結前の書面交付義務

金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、あらかじめ、顧客に対し、次に掲げる事項を記載した書面(契約締結前書面といいます)を交付しなければなりません。

  1. 「契約締結前書面」の内容を十分に読むべき旨及び顧客の判断に影響を及ぼすこととなる特に重要なもの(「契約の概要」のポイントや「元本損失又は元本超過損が生ずるおそれがある旨」等)を12ポイント以上の大きさの文字・数字を用いて最初に平易に記載する。
  2. 手数料の概要や、リスク情報等を枠の中に12ポイント以上の大きさの文字・数字を用いて明確かつ正確に記載する。
  3. その他書面に記載しなければならない事項
    金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名及び住所
    金融商品取引業者等である旨及び当該金融商品取引業者等の登録番号
    金融商品取引契約の概要
    手数料、報酬その他の当該金融商品取引契約に関して顧客が支払う対価に関する事項であって内閣府令で定めるもの

※なお、契約締結前書面を交付した日から1年以内に同種の内容の契約(店頭金融先物取引に係るものを除く。)の締結を行った場合は、その締結日に契約締結前交付書面を交付したものとみなされます。

 

8.契約締結時等の書面交付義務

金融商品取引業者等は、金融商品取引契約が成立したときは遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成し、(契約締結時書面といいます)顧客に交付しなければならなりません。これは、成立した金融商品取引契約のうち一定の重要な事項について顧客が確認するためのものであり、契約の全内容を記載した契約書とは区別されます。書面の記載事項については、取引類型ごとにきめ細かく定められていますが、共通記載事項では、次のようなものがあります。

  • 金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名
  • 金融商品取引業者等の営業所又は事務所の名称
  • 金融商品取引契約、解約又は払い戻しの概要
  • 金融商品取引契約の成立、解約又は払い戻しの年月日
  • 金融商品取引契約、解約又は払い戻しに係る手数料に関する事項
  • 顧客の氏名又は名称
  • 顧客が当該金融商品取引業者等に連絡する方法

9.保証金の受領に係る書面の交付

金融商品取引業者等は、その金融商品取引業に関して顧客から保証金を受領したときは、顧客に対し、直ちに保証金を受領した旨を記載した書面を交付しなければなりません。

10.クーリング・オフ制度

金融商品取引法では、利用者保護の徹底を図るために、クーリング・オフ制度を設けています。金融商品取引業者等と金融商品取引契約を締結した顧客は、契約締結時書面を受領した日から起算して政令で定める日数を経過するまでの間、書面によりその契約を解除することができます。ただし、すべての金融商品取引契約に適用されるのではなく、金融商品取引契約の内容その他の事情により政令で定めるものに限ります。

禁止行為

  1. 虚偽告知の禁止
    金融商品取引業者等(その役員、使用人を含む)は金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げてはなりません。
  2. 断定的判断の提供等の禁止
    金融商品取引業者等は、顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させる恐れがあることを告げて金融商品取引契約の勧誘をしてはなりません。
  3. 勧誘受託意思確認義務
    金融商品取引業者等(その役員、使用人を含む)は、金融商品取引契約の締結につき、その勧誘に先立って、顧客に対し、その勧誘を受ける意思の有無を確認することをしないで勧誘をする行為をしてはなりません。
  4. 再勧誘の禁止
    金融商品取引業者等(その役員、使用人を含む)は、金融商品取引契約締結の勧誘を受けた顧客が金融商品取引契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続してはなりません。
  5. 損失補てんの禁止
    金融商品取引業者等は、有価証券の売買その他の取引について、その有価証券について顧客に損失が生じたり、あらかじめ定めた額の利益が生じないこととなった場合には、自己又は第三者がその全部又は一部を補てんし、又は補足するため顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、顧客又はその指定した者に対し、約束をしてはなりません。
  6. 不招請勧誘の禁止
    一部の金融商品取引契約の締結については、金融商品取引業者等(その役員、使用人を含む)は、金融商品取引契約の締結の勧誘を要請していない顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、金融商品取引契約の締結を勧誘することは禁止されています。